2020-01-01から1年間の記事一覧
わが家の台所の壁にかかっている、逆回りで動くこの時計を奥方が買ったのは、こちらで暮らしはじめたころのことである。日本から遠路やってきた友人はたいてい「なぜ?」と尋ねる。「これは、時間に追われる東京にさよならをした象徴みたいなものよ。時間が…
サン・ジャン・ドコール村 筆者が上記のタイトルで2007年、白水社のふらんす誌に12回寄稿したのが、暮らしシリーズの事始めであった。これが好評で、同誌のインターネット版で番外編として3年間続 け、その後も、2012年からLGMIと一緒に3年間継続した。 内容…
脱出計画が始まった瞬間 The Times モスクワのアパートに到着したゴルディエフスキーが発見したのは、ドアが開かないことだった。3番目のカギを使ったのはKGBの捜査班に違いないと思った瞬間、彼は背筋が寒くなった。自分の運命はこれで終わりだと思った。逮…
ソ連の水爆実験(1955) You Tube 1978年夏、デンマークからモスクワに帰任したゴルディエフスキーは、第3局の部長ヴィクトル・グルミコに離婚して結婚することを報告した。すると、彼は「これですべてが変わるな」と返答した。やはり、KGB文化では離婚…
世紀の二重スパイゴルディエフスキー(1976年撮影) AP 『 スパイと裏切り者: 冷戦最大の諜報』(2018)を読んだ。この本はまだ訳がなく原題は“The Spy and the Traitor:The Greatest Espionage, Story of the Cold War“である。 ベン・マッキンタイアが書…
カミュとカザレス 彼女のアパートで Paris Review 1944年 6月5日、アルベール・カミュは30歳で、表の顔は舞台の演出家、裏の顔はレジスタンス紙『コンバ』の編集長だった。マリア・カザレスはスペイン首相の娘で将来を嘱望される21歳の女優だった。 その日、…
アルベール・カミュ Henri Cartier-Bresson 「おそらく、どの世代も世界を作り替えることに責任を感じていることでしょう。しかしながら、今の世代の場合は世界を作り替えることではないのです。その任務のもっと大きいもの、つまり世界が自分自身を破壊して…